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2008年12月12日 (金)

アンドロメダへ・・(1/3)

 本日から未発表の作品をいくつか掲載します。

 作品の完成度もいまひとつで校正も不十分ですが、それなりにおもしろいんじゃないかな?と思っています。

 まずは宇宙空間を舞台にして3人の会話形式で話が進められる「アンドロメダへ・・」を3回に分けて掲載します。

アンドロメダへ・・(1/3)

 宇宙にはたくさんの隕石が飛びかっています。それらはゴミだとかダスト(塵)だとか呼ばれるのですが時にそのゴミは深刻な被害をもたらします。

桐山「先ほどの隕石衝突の被害状況が判明した」

 桐山船長の神妙な声に的場航海士と深町技師は息を呑んでじっと耳を傾けました。

桐山「幸い破損箇所のシールドは保護されている。エアリークも火災も現在のところ発生していない。太陽電池も機能している。したがって人工重力もこの通り維持されている」

 的場航海士と深町技師はほっと胸をなでおろしました。

桐山「しかし我がサテライトステーションは深刻なダメージを受けている。酸素供給装置が破損した。それに通信機能も麻痺している」

的場「何ですって!」

深町「それじゃあ、船内の酸素は・・・」

桐山「もって3日だろう」

的場「じゃあ、すぐに脱出しないと・・・」

 深町技師も的場航海士の顔を見てうなずきました。

桐山「それも無理だ・・・実は・・・シャトルが破損している」

深町「シャトルが破損!」

的場「それじゃあ・・・」

桐山「そうだ・・・ベースステーションへの帰還は・・・きわめて困難になったということだ」

 しばらくの間沈黙が流れました。

桐山「我々に残されたのは3隻の脱出ボートだけだ」

深町「ボートで・・・ベースステーションまで・・・行けるんでしょうか?」

 深町技師が的場航海士の顔を見ながら不安そうに聞きました。

的場「まあ・・・無理だな。ボートの推力じゃベースまで1週間はかかる。しかも燃料や酸素はぎりぎりだ。それにボートの通信出力じゃベースのよほど近くまで行かないとベースと通信できない」

桐山「的場君の言う通りだ。しかしベースのある程度近くまで行けば、ボートの救助信号をキャッチしてくれるかもしれん。それが我々の唯一助かる道という訳だ」

 サテライトステーションのコントロールルームの中にまた沈黙が流れました。

的場「船長。それしかないんならやるしかないでしょう?脱出命令をだしてください」

桐山「それがな・・・問題がもうひとつあるんだ」

深町「なんですか?これ以上まだなんかあるんですか?」

 若い深町技師が不安げに聞きました。

桐山「3隻のボートのうち・・・ひとつのエンジンに問題があることがわかった」

的場「問題?」

深町「なんですか?問題って?教えてください!」

深町技師は興奮して桐山船長に詰め寄りました。

桐山「ブースターが壊れて、出力を上げると・・・オーバーヒートしてしまう」

的場「それじゃあ・・・途中で・・・爆発するってことですか?」

桐山「その通りだ」

深町「冗談じゃないですよ!救命ボートにはどうやったって一人ずつしか乗れないじゃないですか!2隻のボートでどうやって3人が脱出するんですか!」

深町技師は不安そうな顔で桐山船長を見つめました。

桐山「この中の一人が・・・壊れたボートに乗ることになる」

的場「・・・・・」

深町「誰が・・・誰が乗るんですか!爆発するとわかっているボートに!」

桐山「それは・・・俺にも決められん。コンピュータに・・・イターナルに決めてもらおうと思う」

的場・深町「イターナルに・・・」

桐山「イターナルは我々3人にとって一番メリットのある選択をしてくれるはずだ。意義のあるやつはいるか?」

的場・深町「・・・・・」

桐山「いいんだな?」

 そう言いながら桐山船長はイターナルのキーボードに向って入力しました。桐山船長がenterを押すとしばらくの間イターナルは無言のまま真っ黒な画面を表示していました。そして画面が明るくなり・・・

”vote!  Who operate the troubled boat?”

桐山「なんだって?」

的場「vote・・・投票しろ・・・」

深町「投票?」

桐山「イターナルも決めかねている。我々3人にとって一番いい選択を決めかねているんだ。だから俺達に投票しろと・・・俺達で壊れたボートに乗る人間を投票で決めろということだ」

 次の瞬間、イターナルの出力ポートから3枚の用紙が出力されました。的場航海士がそれを手に取りました。

的場「船長。投票用紙のようです」

 的場航海士が桐山船長に用紙を渡しました。

桐山「俺達の名前が記載されている・・・・。よし、今から24時間の間に脱出の準備をしろ。そして明日の0900時にここに集合するんだ。そのときに一人ずつこの投票用紙に記入してイターナルに入力する。脱出ボートは1号から3号まであるが俺にもどのボートにトラブルがあるのかわからん。明日イターナルが決めたボートに俺達は乗り込む。誰が誰に投票したのか、誰がトラブルのあるボートに乗っているのか・・・それは・・・トラブルが起こるまでイターナルにしかわからん」

 3人は一見冷静そうに振舞っていましたが、もう心の中はパニック状態で何がなんだかわからなくなっていました。三人のうち一人が明日死ぬ運命にあるといわれたら誰だってそうでしょう。みんな自分が助かる道を考え始めたのです。

              *深町の場合*

 何で俺が・・・こんな目にあわなくちゃいけないんだ!たった1年間のサテライト勤務だったんだ。来週になればベースステーションに帰って・・・その1ヵ月後には地球に戻れるはずだったのに・・・・。

俺はまだ21歳なんだぜ。思えばこの1年間よく我慢したもんだ。自分勝手な船長と無愛想な航海士。一緒にいても仕事以外の話をしたことなんかほとんどないって。仕事が終われば毎日ビデオを見るだけの生活だったな。それもあと1週間で終わりだったのに・・・畜生!なんでこんなことに・・・。

でも、何とか助かる道を考えないと・・・。エンジントラブルのあるボートに乗れば100%助からないぜ。なんだって?3人で投票する?じゃあ・・・三人のうち二人が残りの一人に投票すれば決定ってことだな。船長と的場さんが俺に投票すれば、俺がトラブルボートに乗るってことか?

船長は俺をいつも目の敵にしていたからな。的場さんだって俺のことを生意気なやつって思っているだろう。

まずいぜ・・・。この投票はどう考えたって俺に不利じゃないか!なんとかしないと・・・。

だいたいこんなときは船長が最後まで残るもんじゃないのか?自分は船と運命をともにするからお前たちは先に行けって言うのが今までの映画のパターンだよな。でも、あの船長は絶対そんなこと言わないだろう。何とか自分だけ助かる道を考えているはずだ。

的場さんは・・・奥さんと子供がいるのは知ってるけど、ベースにいたときはずいぶん遊んでたじゃないか。何人の女を泣かせたんだ?地球にはもう2年以上帰ってないんだろう?そんな亭主や父親が宇宙の片隅で死んだって誰も悲しむものか!

俺は確かに独り者だけど、地球にはお袋が待っているんだ。お袋よ、俺は絶対生きて帰るからな!こんなところで死ぬわけには行かないぜ。

 何かいい考えはないのか・・・?ちょっと待てよ。三人しかいないんだから二人のうちどちらかを抱きこんで、俺に投票しないようにすれば・・・俺がもう一人のやつに投票すれば、当たりはそいつに決定じゃないか・・・。

              *的場の場合*

 ブースターに問題のあるボートか・・・まあ、爆発するのは目に見えてるな。それに乗った人間は助かる可能性はないってわけだ。

あと1週間でベースに戻れるところだったんだ・・・。来月には地球へ戻って沙織や圭介と一緒に暮らせるところだったのに・・・。

もう2年も会ってないのか。圭介はもう5歳だな。幼稚園ではやんちゃでガキ大将だろうな・・・。

確かにベースじゃ俺は浮気もしたけどな、でも全部一晩きりだったんだぜ。決まった相手なんていなかったよ。俺は沙織のことを愛しているんだ。そして圭介も・・・。

 誰が誰に投票するんだ?深町はどっちに投票するんだ?

 畜生、こんなことになるんならもっと優しくしておけばよかったぜ。あいつは若いくせに生意気なやつで俺とは最初から馬が合わなかったよな。仕事以外の話をしたことなんかほとんどなかったっけ。でもあいつは船長ともうまくいってなかったからな。どっちに投票するかは5分5分ってとこか。

 船長は自分だけは助かろうと思っているんだろう。奥さんもなくして、もう60に近いんだからいい加減若い俺達にあとをたくして船と運命をともにしろよ。もう十分生きただろう?

でもあの船長はそんなことはこれっぽっちも考えていないだろう。自分が助かる方法を必死で考えているはずだ。ひょっとしたらコンピュータに細工しているのかもしれないぜ。イターナルにアクセスできるのは船長だけだからな。

となると・・・船長を敵に回すのは得策とは言えんな。俺が投票するのは・・・深町だな。あとは船長をうまくまるめ込まないと・・・。

              *桐山の場合*

 とんでもないことになったな。偶発的な事故とはいえ、俺の管理責任が問われるのは間違いないだろう。でも今はそんなことより何とか生きて帰る方法を考えないと・・・。

克典、お前の結婚式以来もう2年も会ってないな。先月は女の子が生まれたそうじゃないか。俺は孫の顔を見るまでは絶対に死なんぞ!どんなことがあっても生きて地球に帰ってやる。たとえどんな手段をとってもな。

 的場は、何かあるとことごとく俺に反発してきたな。確かに有能な航海士だができすぎるのが玉にきずってところだな。

あいつには奥さんと子供がいたっけ。でも不倫ばっかりしてるがな・・・。俺が目をつけていたベースステーションの飲み屋の「かつき」のママとも付き合ってたって話だ。本当に気に食わない奴だ。

深町は・・・こいつはできの悪い奴で若いくせにいつも口先ばかり。仕事が終わるとさっさと自分の部屋に引っ込んでビデオばかり見ているような根暗なやつだ。確か地球にはお袋さんがいるらしいが、まだ独身で子供もいない。俺が投票するのは・・・どちらかっていうと深町だろうな。でもあいつら二人が俺に投票したら・・・そんなことはさせるものか!

 そして三人は何とか自分が生き残るために必死の作戦を立てます。

アンドロメダへ(2/3)に続く

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