「悪魔の手」
今日は前回とは逆の「悪魔の手」のお話です。
手を触れただけで誰でも殺せる「悪魔の手」。
誰を殺しても証拠は残らない。
そんな「悪魔の手」を手に入れたらあなたはどうしますか?
「気に食わないやつを片っ端から殺したい」
それとも
「法律ではさばけない悪いやつらを俺が一掃してやる」
そんなことを考えますか?
これはまさに「デスノート」の「キラ」です。
「キラ」は犯罪のない理想の社会を作るために悪人を次から次へと闇に葬って行き、その結果、社会から犯罪が激減します。
しかし「キラ」がどういう結末を迎えたかは・・・
多くの皆さんがご存知のことと思いますので、ここではあえて触れません。
「悪魔の手」を持った人間が悪を一掃しようとすることは一見すばらしいことに思えますが、どうして問題がおこるのでしょうか?
それは「悪」を選別するためには「正確な事実認識」と「公正な社会的判断」が不可欠だからだと思います。
個人が行った行為を正確に認識し、その行為が公正な立場の人たちから「社会的に悪」であると判断されて始めて「悪魔の手」を使うことが許されるのであり、決して個人の判断で使用されるべきものではありません。
すなわち「悪魔の手」は「神の目」と「神の判断力」を伴ってこそ初めて社会に受け入れられるのです。
ではこの3つを兼ね備えたシステムが機能するようになったとしたら・・・
社会からは犯罪が消えて幸福な理想社会になるのでしょうか?
そのようなシステムが究極まで発展したとしたら・・・
こんなお話はどうでしょう。
――――――――
「悪魔の手」
2xxx年。犯罪抑止法の成立に伴い、シティの全ての人間は生まれるとすぐに脳に微小チップを埋め込まれることになった。
このチップから全ての個人の知覚と思考が中央のマンモスコンピュータ「ビーナス」にリアルタイムで送られる。
個人の行動は全てビーナスに監視されることになるので犯罪行為を行えば、個人が容易に特定され、正確な状況再現が行われることになる。
それどころか犯罪行為を計画しただけでビーナスの知るところとなり、事前に警察権力を関与させることさえできる。
さらにビーナスが危険と判断すれば個人に埋めこまれたチップを遠隔操作して脳の全機能を停止させることもできるのだ。
ビーナスの管理により、人間には犯罪行為を行うことに対して強い抑止力が働いている。
シティでは犯罪行為はほとんどなくなり、人々は平和に暮らしている。
さらにビーナスにより個人の全ての情報は一元管理されている。
そして最もトラブルが少なく、建設的にシティが発展するように人々の行動は規制されている。
「あなた・・・誰?」
サヤカは台所にいる見知らぬ男に声をかけた。
「やあ・・すまない。あんまり腹がへったもんで・・ちょっとお邪魔したよ」
カイジは冷蔵庫のソーセージをほおばりながら挨拶した。
「どこから入ったの?」
「そこの窓が開いてたから・・・」
「そんなことしてあなた・・・ビーナスに感知されて捕まるわよ」
「ビーナス?」
「あなた・・異端者ね・・」
シティに属さず、山や森で暮らすものたちの集団は異端者と呼ばれる。
シティの管理からはずれ、独自に農耕や狩猟を行って生活している。
異端者はシティの中では警察権力行使の対象となるので普通はシティの周辺に現れることはない。
捕らえられた異端者は脳に微小チップを埋め込まれることになる。
「ふーん・・・じゃあ、あんたたちの生活はそのビーナスっていう機械が監視しているのか?」
「そうよ。そのおかげで私たちは平和な生活が送れるのよ」
「でも自由に外に出たり、酒を飲んだりはできないんだって?」
「夜間の外出は許可がなければ原則として禁止よ。アルコールは1日に1杯だけに規制されているわ」
「食べたいものも自由に食べれないのか?」
「その人に合わせた基準栄養素の範囲なら自由よ。肥満や生活習慣病にならないようにビーナスが管理してくれるのよ」
「あんたたち、それで幸せ?」
「確かに窮屈なこともあるけど、ビーナスが決めたことだから・・・」
「なぜ人間が自分で決めないんだ?なぜ機械に管理されなくちゃいけない?」
「あなたたちの社会では規則はないの?」
「規則はちゃんとあるさ。俺たちはチーフが決めたことはきちんと守る。でもそんな細かいことは言わない。他人と争うなとか、困っている人を助けろとか・・・・・・かな?うまいものを食うな、なんてことは聞いたことないぜ」
「そのチーフって言う人が厳しい規則を作ったら?どうするの?」
「チーフに意見があればみんなで相談する。そしてみんなが納得した規則に作り直すんだ。機械の意見なんていらない」
「あなたたちの世界には犯罪はないの?」
「そりゃ、けんかすることもあるけど、ちゃんとかげんするし、明日になればみんな忘れている。食べ物はみんなで分けるし、病気や年をとって働けなくなったやつは他のみんなが助けてやる。家に鍵はあるがそれは動物から身を守るためだけだ。」
「友達もいっぱいいるの?」
「ああ・・・君は?」
「私が話していい人間はビーナスが決めるの。趣味や性格が合って争いにならないような人たち。そんなに多くないけど・・」
「ふーん・・・恋人は?」
「まだ決められていないの」
「決められていない?それも機械が決めるのか?」
「結婚してうまくやっていける人をビーナスが・・・」
「わかったわかった・・・俺にはとても考えられないぜ。ああ・・・そろそろ行くよ。今から海を見に行くんだ」
「海?こんな夜に?」
「俺は夜の海が好きなんだ。波の音しか聞こえなくて、どこまでも広がる空には星がいっぱいだ。まるで宝石箱の中にいるようだぜ」
「そうなの・・・」
「よかったら一緒に行くか?」
「ダメよ!私の行動は・・・」
「ビーナスさんに監視されている・・・か?」
カイジはちょっと間をおいて言った。
「じゃあ・・・俺がそのビーナスっていうのを壊してやろうか?」
「何言ってるの?」
「なあに、壊すって言ったって爆発させるわけじゃない。機械なんて基盤の一つも壊してしまえばまともに動かないさ。まあ、半日で修理されるがな・・」
「ダメよ!あなた、殺されるわよ!」
「俺の頭の中にはチップなんて入っちゃいない。俺の行動はビーナスさんもわからないさ」
そういいながらカイジは窓から思い切りよく飛び出した。
ほんの100mほど走ったカイジの背中を突然鋭い痛みが襲った。
草むらの上に倒れたカイジはもうろうとしていく意識の中で集まってくる警官たちが無線で話す声を聞いた。
「麻酔で眠らせました。異端者です。ビーナスの破壊は食い止めました。今からチップ埋め込みに向います」
・・・どうして・・・どうして俺の行動が・・・
カイジの姿や声はサヤカの脳に埋め込まれたチップからビーナスにリアルタイムで送信されていた。
「悪魔の手」 終わり
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人間の中に存在する「悪」が究極まで抑制されたら、人生なんてカスみたいな物?
オヤジじゃなくても人間は「チョイ悪」がいいでしょうか・・・
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犯罪を裁くというところから生活を抑制されるところまで話が飛んでいる。
偏った食生活は社会にとっての悪ではないだろう。
あまりにつまらないので途中で読み飛ばしたが(笑)
妄想によって無理矢理、悪魔の手は悪だという結論に持ってきているだけ
投稿: | 2011年7月20日 (水) 02時51分
迅速な対応とキチンとした梱包をありがとうございました。
また、商品も綺麗で素敵な物でした。
信頼と信用出来るショップ様です。
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