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2013年1月16日 (水)

「寿命の壺」

「寿命の壺」

 

第1章 煩わしい医者

 

 俺の名は桂木圭太。45歳。5歳下の妻と6歳の子供の3人暮らし。

 IT関係の会社の中間管理職で、毎日多忙だが、まあまあの収入を得ているのだから幸福なほうなのだろう。

 定期健診で異常を指摘され、病院を受診するように勧められた。

 この忙しいのに全く迷惑な話だ。

 

「桂木さん・・・昨年もお話しましたが・・・そろそろ病気を認識していただいてきちんと治療しないと大変なことになりますよ。血圧は180を超えているし、悪玉コレステロールも190。耐糖能異常も出てきているし・・・。煙草をやめて、接待もほどほどにしないと脳梗塞、心筋梗塞のリスクはかなり高いですよ」

「それは去年も聞きましたよ先生、わかってますって。家内からも毎日忠告されてますから・・。でもどうしようもないんですよ。運動なんてしている時間はないし、接待だって私が行かないと商談が取れない。取引先に勧められたら酒だって飲まないわけにはいかない。煙草だって私だけ禁煙中ですなんて言ったら場の雰囲気が壊れちゃうじゃないですか」

「じゃあせめてお薬だけでも始めませんか?」

「まあ、どうしてもって言うんなら処方してもらってもいいですけどね。でも通院は無理ですよ。今日だってすぐにでも仕事に戻りたいんですから・・」

 

 全く医者っていうのは煩わしいもんだ。

 二言目には禁煙、お酒を控えましょう、運動しましょう、食事制限しましょう。

 そんなことは俺だってわかってるさ。塩分を制限すれば血圧も下がるし、運動すれば体重も減ってコレステロールも下がる。

 しかし今、そんなことにかまっている暇はないんだよ。

 それに俺は、学生時代は硬式野球部のエースで体は鍛えているから体力には自信がある。

 階段を昇ってほかの奴らが息切れしても俺は何ともない。

 脳梗塞?心筋梗塞?そんなのは年寄りの病気だ。俺はまだ45歳だ。あと15年して退職して年金暮らしになったら何でも言うことを聞いてやるさ。

 さあ、今日もお得意さんの接待だ。

 

 3次会には俺の行きつけの店を選んだ。

 もうすぐ午前様だが相手方がえらく乗っているのでここで帰るわけにはいかない。

「あらー、桂ちゃん!いらっしゃーい!」

 威勢のいいママの声に促されていつもの席に案内される。

 相手方を座らせたその時・・・

「ううっ・・・」

 突然強い胸痛が俺を襲った。俺はたまらずその場に倒れこんでしまった。

「キャー!桂ちゃん!」

「課長!大丈夫っすか!」

「桂木さん!」

 俺の意識はそのまま遠のいて行った・・・。

 

第2章 寿命の壺

 

 ふと目を覚ました俺はあたりを見回した。

 ぼんやりと霧がかかった空間にはなにもない。

 右を向いても左を向いても上を向いてもただ灰色のきりがぼんやりと見えるだけだ。

 困惑している俺の前に突然人影が現れた。

「な・・・なんだ!おまえは!」

 俺はびっくりしてしりもちをついた。

 そこに立っていたのは漫画の「ねずみ男」のような灰色のフードをかぶった青白い顔の痩せこけた男だった。

「これはこれは桂木さん、お待ちしておりました」

 風貌に似あわない軽い声で男は話しかけてきた。

「お・・お前は誰だ!」

「あーすみません・・驚かしてしまいましたか・・。私は・・あなたたちの世界の言葉で言うと『死神』です」 

「し・・死神!?じゃあ・・俺は・・死んだのか?」

「ちょっと違いますね・・・そうですね、『死にかけ』ってとこでしょうか?」

「死にかけ?」

「はい。もうちょっとで死ぬんだけどまだ死んでないかなーっていうのが死にかけですね」

「あんた、ふざけてんのか?」

 俺は不機嫌な顔で死神と名乗った男をにらんだ。

「あ・・すみません、そんなわけじゃないんですが・・。じゃあ状況を説明するためにもさっそく本題に入らしてもらってよろしいでしょうか・・・?」

「本題?」

 死神と名乗った男は意を決したように大きく深呼吸してからゆっくりと話し始めた。

「はい。実はですね・・・桂木さんは運悪く今朝、寿命の赤玉を引いてしまったのですよ・・・」

「寿命の赤玉?」

「はい。周りをご覧ください」

 死神に言われるまま周りを見回すと、さっきまで何もなかった空間に1m位の高さの壺が縦横無数に並んでいた。

「な・・・なんだ?こりゃ」

「これはですね、寿命の壺です」

「寿命の壺?」

「はい。まあ、簡単に言うと『人の寿命を決めているもの』でしょうか・・」

「人の寿命?じゃあ・・よく言われてる寿命のろうそくみたいなものか?長かったり短かったり、太かったり、細かったり・・・それが燃え尽きれば命が尽きるっていう・・・」

 俺の言葉を聞いて死神はちょっと困惑した顔をして首を横にかしげて右手の人差し指を何回か左右に振ってちっちっちっと小さくつぶやいた。

「ああ・・・まだいるんですよね・・・そうやって古来の迷信のようなことを信じている人が・・・。そんなのは何百年も前の話で、今はもう近代的なシステムに代わっているのですよ。寿命を規定しているのは『確率』なのですよ」

「確率?」

「はい。今日この人が死ぬ確率は何%か・・・。死ぬかもしれないし死なないかもしれない。我々死神にもその人の寿命は確率でしか判断できないのです。ですからあなたが今日ここに来ることも昨日までは私にもわからなかったのです」

「昨日まで?」

「はい。正確には今朝あなたが『寿命の赤玉』を引き当てるまでは・・・ですがね」

「その・・・寿命の赤玉ってのはなんなんだ?」

「はい。それをお話することこそが私がここに現れた目的です。じゃあ今から説明いたしますのでよく聞いてください」

「なんだよ。改まって・・」

 死神はゆっくりと話し始めた。

 

第3章 赤玉

 

「桂木さんの周りにたくさんの寿命の壺があるのが見えると思いますが、これは生きている人間一人一人に対応しています。すべての人間に寿命の壺が一つずつ対応しているのです。この中には数万個以上のたくさんの白玉とほんの少ない数の赤玉が入っています。すべての人間は朝、起床する前にここにやってきて壺の中に手を突っ込んで一つ玉を引きます。それが白ならその人はその日は生きられます。しかし運悪く赤い玉を引けば・・・」

「その日に死ぬってことか?」

「はーい!その通り!」

 死神が明るい声で答えた。

「じゃあ、人間は毎日ここにやってきて壺に手を突っ込んで玉を引いているのか?」

「はい。ただ、ここにやってくるのは潜在意識だけですが・・・本人は全くここで玉を引いていることは認識していません。桂木さんもそうだったでしょ?」

「ああ・・・」

 確かに俺はこんなところに来るのは初めてだ。俺の潜在意識が毎日玉を引いていた?なんだ?そりゃ・・・。俺が赤玉を引いた?そんなことしるもんか!

「・・その・・・赤玉の数は最初から決まっているのか?」

「いえ、人によってさまざまなのです。生まれたときの赤玉は大体一つなのですが、年を取っていくにしたがって増えていきます。具体的には・・・月に一度我々が各自の壺の中に赤い玉を入れていくのですが・・・」

「赤玉を入れる?」

「はい。その人の1か月間の死亡リスクに応じて毎月1日に赤玉を入れていくのです。ですから赤玉を引く確率は年齢とともに増えていくってことですね。そうでなくても毎日白玉が一つずつ減っていくわけですし・・・」

「赤玉を入れるって・・・何個くらい?」

「まあリスクに応じてですので・・血圧の高い人で1つか2つ。糖尿病が悪化すれば2ー3個。交通事故にあったりすると100個以上入れちゃうこともありますけどね」

「100個!」

「戦時中なんてそんなもんじゃなかったですよ。その人に赤紙が来た時点で数百個入れてましたね。もう赤玉が足りなくなってあちこち駆けずり回ってましたねー」

 死神は『いかにも大変だった』という表情で一人うなずきながらつぶやいた。

「じゃあ俺は・・・今朝ここでこの壺から赤い玉を引いたのか?」

「残念ながら・・・そういうことになりますですね」

「じゃあ俺はこのまま死ぬってことか?」

「はあ・・・本来ならそうなのですが・・・」

 死神はちょっと気まずそうに頭をかいた。

「違うのか?」

「はあ・・・実はですね・・・これからが大事なところなのですが・・・」

 死神は口ごもってなかなか口を開かない。

「何だよ!はっきり言えよ!」

「はい・・実はですね、ちょっと手違いがありまして・・・」

「手違い?」

「今月の初めに私が・・・ちょっと桁を間違えまして・・桂木さんの壺に100個の赤玉を入れてしまったのですよ・・・」

「100個!!」

「はあ・・・それで運悪く今朝その一つをあなたが引いてしまったということなのですが・・・」

「じゃあ俺は本来死ななくてよかったのに死んでしまうってことか?」

「あ・・・いや、そう断定できるわけでは・・・もともとあった赤玉を引いてしまった可能性もあるわけで・・・」

「そんないい加減なことがあるか!俺の命がかかっているんだぞ!」

 俺は死神の襟をつかんで詰め寄った。

「はい・・・はい・・・おっしゃる通りで・・・。この件では私も上司からこっぴどく叱られました。給料は減らされるし、彼女には振られるわでさんざんでした」

「給料?彼女?死神にも彼女がいるのか?」

「あたりまえじゃないですか!私にだって彼女くらいいますよ!馬鹿にしないで下さいよ」

 死神はいかにも不愉快そうに憤慨して言い放った。

「ああ・・・悪かったよ・・・。死神にだって彼女くらいいるよな・・・」

 本当か?そんなこと納得していいのか?

「それで・・?俺はどうなるんだ?入れた赤玉を抜いてもう一度玉を引けばいいのか?」

「残念ながら・・・一度入れた赤玉は我々でも戻すことはできないのです」

「戻せない?じゃあどうすんだよ!」

 今度は俺が憤慨して聞いた。

「まあ入れちゃったものはどうしたって戻せないんですがね。上司に相談しましたら・・・今回はやり直しを認めると・・」

「やり直し?じゃあもう一回引けるんだな?」

「まあ・・そういうことになりますか・・・」

「それで白玉を引いたら俺は生きかえるのか?」

「そのとおりでございます」

「もし赤玉を引いたら?」

「その場合はご愁傷様ということで・・このままあの世にお連れいたします」

「あの世・・・」

俺はごくっとつばを飲み込んだ。

「・・このまま俺が死ぬことになっても・・・入れた赤玉は戻せないと・・」

「申し訳ございませんがそういう仕組みでございます。まあ今回はやり直しが認められただけでも特別なことでして・・・」

 死神は額の汗をぬぐうかっこをしながら言った。

「しゃあないな・・・」

 俺はあきらめた。

 

第4章 運命の一瞬

 

「ところで・・・俺の壺には何個くらいの赤玉が入っているんだ?」

「それはお伝えできないのですよ・・」

 死神は申し訳なさそうに言った。

「というか・・・我々にもわかんないんですけどね」

 今度はあっけらかんと笑いながら答えた。

「しょーがねーなー・・・」

 俺はふてくされた顔でつぶやいた。こいつは死神の仲間の中でもきっとあんまり出来のいい奴じゃないのだろう。変な奴にかかわっちまったもんだ。

「じゃあ、引いてやるよ」

「ちょっと・・ちょっと待ってください!その前に今月の赤玉を・・と」 

 死神はポケットの中から何やら取り出した。

「おいおいおい・・・なんだそりゃ!何個あるんだ?」

「はい、ちょうど10個でございますよ」

 死神はあっけらかんと答えた。

「10個!お前・・・毎月それを俺の壺の中に入れていたのか?」

「はい。高血圧に糖尿病、悪玉コレステロールに煙草40本。アルコールに肥満、毎日の夜更かし・・・トータルするとこれくらいになっちゃいますかね」

「お・・おまえ・・・俺の断りもなしにそんなに入れるなんて・・おかしいじゃねーか!」

「あれ?ご存じなかったですか?」

「初めて聞いたよ!俺はここに来たのもあんたに会うのも初めてだよ!」

「それはそうかもしれませんがね、ちゃんと入れる赤玉の数は間接的にお伝えしているはずですが・・・」

「間接的?」

「はい。たとえば・・あなたの病院の先生ですね。血圧が高いと死亡率2倍とか煙草を続けるとさらに2倍とか言いませんでしたかね?」

「そりゃあ・・・言ったけど・・・」

 俺の頭の中に去年の医者の言葉がよみがえってきた。

「でしょう?」

 死神は嬉しそうに言った。

「それとあなたの奥さんですね。こんな生活してたら命がないわよって言いませんでした?」

「・・・言ってたよ・・・」

「ですよねー!それって『赤玉を入れますよ』ってことと一緒なんですよねー。じゃあ今月分を・・・と」

「ちょっと待て―!お前、先月間違えて100個入れたって言ったじゃないか!じゃあその分は当然今月分から減らさなきゃいけないはずだろ?今から10か月は赤玉を入れるな!」

「あれえ?・・・じゃあお聞きしますけど・・・。野球のアンパイアがあなたの投げたストライクをボールと間違えたらあなたどうします?」

「そりゃあおこるよ」

「じゃあ、そのあとであなたが投げたボールをストライクとコールしろって言いますか?」

「そんなこと言えるわけないじゃないか!」

「・・ですよねー!もう一度ミスを犯すことを要求しちゃうわけですからねー。それと一緒ですよ」

 そういいながら死神は手に持っていた赤玉をさっさと壺の中に放りこんだ。

「あ・・・ばか・・・・・・。入れちまいやがった・・・」

 俺は呆然としてその場に立ちすくんだ。

「大丈夫ですよ。まだまだ白玉のほうが多いですから」

 死神はあっけらかんとした顔で笑っている。

「さあ!どうぞー!運命の一瞬でーす!ダダダダダダダダ・・・」 

 死神は太鼓をたたく真似をした。

「やめろやめろ!俺の命がかかってるんだぞ!静かに引かせろ!」

「かしこまりました・・・ではどうぞ・・・」

 死神は急に真面目な顔になって首を垂れて壺に手をかざした。

 俺はゆっくりと壺の前に進み、手を中に入れた。

 俺の手にたくさんの玉の感触が伝わる。どれも同じで全く区別がつかない。

「ど・・・どれが赤玉なんだ・・・?」

「そりゃあ無理ってもんですよ。赤玉と白玉は重さも大きさも感触も全く同じなんですから・・。皆さんいつもは何気なく引いてますよ」

 さんざん迷った挙句、俺は一つの玉をつかんで壺から手を抜いた。

「決まりましたー!さあ、手を開いてください!」

 俺は恐る恐る手を開いた。そこにあったのは・・・

「おめでとうございまーす!白玉でーす!」

 俺はその場にへなへなとしゃがみこんだ。

 

エピローグ

 

「あなた!」

 俺の目に飛び込んできたのは今まで見たことがないくらいに目を開いて驚いている、すっぴんの妻の顔だった。

「あなた!わかる?助かったのよ!」

 

 俺の不思議な体験はただの夢だったのか、それとも本当に死の世界を垣間見たのかはわからない。

 しかしその後の俺は酒もタバコもやめ、接待も断り、きちんと運動をする、健康的な生活に変えた。

 

 俺の壺には今月は何個の赤玉が入れられたのだろうか?

 入ってしまった赤玉を減らすことはできないのだからこれ以上増やすことはできない。

だって俺達はこれからも毎朝、壺から玉を引かなくてはならないのだから・・・。

 

 (終わり)

 

あとがき

 

先日、高校と大学が一緒だった同級生が急死しました。

元日の朝、突然死したとのことです。

私が彼からの年賀状を見ていた時間にはもう彼は他界していたということになります。年賀状を書いていた時には正月を迎えられないことなど考えもしなかったでしょう。

このお話は彼のことを考えながら書いてみました。

釣りや農業や少林寺拳法やいろいろなことに興味を持ち、いつも元気だった彼がこんなに急にいなくなるなんて・・・

いつもあっけらかんと笑っていた彼を偲んで、今回はわざとコミカルな作風にしてしまいました。

 

死後の世界はあるのでしょうか?

今生きている人の中で死後の世界を見た人は誰もいないのです。

臨死体験をしたという人がいるかもしれませんが、それはあくまでも死の一歩手前まで行ったということで、死後の世界を見たわけではありません。

死後の世界があるかどうかは我々には永遠にわからないのです。

わからないのだからそれは各人が好きなように思っていればいいのでしょう。

「肉体がなくなれば思考する脳もなくなるので存在すらなくなるはず」

と考える人もあるでしょうし、

「いや、精神というものは永遠で科学では説明がつかないから肉体の死後も精神は存在する」

と考える人もあるでしょう。

ただ一つ言えることは、「死後の世界を信じていたほうが死の恐怖は緩和される」ということです。

死によって自分という存在が消えてしまうということは誰でも強い恐怖を感じます。

それが消えるのではなく、別の世界に行くだけ、と考えれば恐怖感は少しは和らぐでしょう。

死によって過去に死別した人たちとまた再開できると考えれば死に対する「楽しみ」も出てくるでしょう。

もし死んだ後に、あると信じていた死後の世界がなかったとしても、自分はもう存在しないわけですから後悔するということもないのですね・・。

死後の世界を信じることは死への恐怖感を緩和し、人生を幸せに生きるために役に立っているのです。

幸福は主観的なもの・・・

信じたほうが勝ちなのです。

 

さて日本人の命に関する価値観について考えてみました。

日本人には「命は万人平等である」という不文律があるように思いますがいかがでしょうか?

 以前サンデル教授の「5人を助けるために1人を犠牲にしてもよいか?」という命題に対して考察しました。

 それに対する私の答えは

「人それぞれによって価値観も正義も違うので答えは個人によって違う」

というものです。

 一人を犠牲にして5人を助けるべきという人もいるし、助かるはずの一人の命を奪ってはいけないという人もいるはずです。5人の中に自分の身内がいれば一人を犠牲にして助けたいと思いますし、5人を助けることを正当化する国家もあれば1人を助けることを正当化する国家もあります。

 このように命に対する価値感も我々は一人一人違うはずなのです。

 各個人の価値観を総合したものが国家の価値観で国家の正義、国家の法律となります。

 当然個人によっては国家の正義や価値観と違う場合もあるのですが、その国家(社会)の中で生きていくためには自分の価値観を押さえて国家の価値観に合わせなくてはならないことになります。

 

 この観点から命に関してもう一度考えてみましょう。

 先ほどの「命は万人平等である」という価値観は皆さんの価値観と一致しているでしょうか?

 結論から言うと私の価値観は違います。

 10歳の健康な子供と100歳の寝たきりの老人の命の価値は同じでしょうか?

 日本の法律ではこの二人の命は同一の価値で扱われます。

 「命は平等に決まっているだろ!100歳だからって寝たきりだからって価値はかわらない!」

 という人も大勢いるはずです。

 しかしもし、あなたがその二人のうちどちらかしか助けられないとしたらあなたはどちらを選択するでしょうか?

 あなたの両手にその二人がぶら下がってどちらかしかひきあげられないとしたらあなたはどうしますか?

 もし命が平等と考えるならばサイコロを振ってどちらかを決めるのが正しいことになります。

 それでも平等だという人に、

 もし10歳の子供があなたの子供ならあなたはどちらを助けますか?

 命は平等だからサイコロを振って決めますか?

 あなたにとってはどこの誰かもしれない寝たきりの老人の命よりも自分の子供の命のほうがはるかに大切で価値が高いと感じているはずです。

 命の価値はその個人によって全く違うのが当たり前で、すべての命が平等であるなどということはありえないのです。

 もし私が元日に亡くなった人の誰かを生き返らせることができるとしたら、私は見ず知らずの人よりも私の友人を生き返らせたいと思います。私にとっては見ず知らずの命よりも友人の命の価値のほうがはるかに高いからです。

 彗星が地球に衝突するアメリカの映画がありました。一部の人をシェルターに避難させるのですが、その選択方法はくじ引きです。ここまでは日本と同じなのですが、違っているのは「50歳以上の人間は対象から除外する」とはっきり明言しているところです。

 アメリカでは年齢によって命の価値が違うことをはっきり明言していることを表現していると思いました。命は万人に平等であるべきという価値観に縛られた日本の政治家にはこのような決断は無理なのでしょう。

 しかし、命の価値は一人一人違う・・この観点に立って政治を行わなければ実際の現場では大きなひずみが出てくるように思ってしまうのです・・・。

 

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